|
病気とつきあう・1
「副腎疾患の早期発見と治療方針(1)」
文/E・A(フェレット・メーリングリスト・ジャパン)
(JFA News No4・5 P6・7 2002年7月)
成獣フェレットの三大疾患のひとつに「副腎疾患」があります。副腎疾患とは、「副腎」という臓器に生じる異常をひとまとめにした呼び方です。厳密にはフェレットの副腎疾患にも何種類かあり、獣医学的な病名、つまり病気の原因が異なれば経過もいくらかは異なります。けれども、毎日の生活の中で問題になる症状や、治療の選択肢は大差ありません。そのため、ここでは副腎疾患として話を進めることにします。
最初にフェレットの体(副腎疾患が起こるしくみや症状など)について、次に動物病院へのかかり方(検査方法や治療方法など)について、最後に家庭生活(手術後の注意点や、フェレット自身のQOLなど)について考えていきましょう。
|
Q
|
フェレットの副腎疾患とは、どんな病気ですか? |
|
|
|
A
|
副腎に異常が生じ、性ホルモン過剰になる病気です |
副腎とは、フェレットを含む哺乳類が左右にひとつずつ、合計ふたつ持っている小さな臓器で、さまざまな種類の「ホルモン」を作っています。ホルモンとは、全身の状態を調整する物質です。副腎疾患は人間やフェレット以外の動物にもあり、ホルモンに関連する問題が起こってきます。そのため、副腎疾患では全身に影響が及び、いろいろな部分にいろいろな形で症状が現れます。そして、ホルモンの中でも「性ホルモン」を過剰に作ってしまうのが、フェレットの副腎疾患の特徴です。
本来、性ホルモンは生殖機能、つまり発情をコントロールしています。そのため、副腎疾患によって性ホルモン過剰になると、不妊手術済みのメスの体や、去勢手術済みのオスの行動に発情同様の変化が生じます。もちろん、不妊去勢手術をしていますから、本当に発情しているわけではありません。
|
Q
|
副腎疾患には、どんな症状がありますか? |
|
|
|
A
|
知っておくべき症状は、貧血、排尿障害、脱毛です。 |
性ホルモンには、いわゆる「女性ホルモン」と「男性ホルモン」があり、どちらが過剰になるかはフェレットによって異なります。一般には、雌雄を問わず、女性ホルモンである「エストロゲン」が過剰になるケースが多いとされています。そして、エストロゲン過剰が主要な症状を引き起こすのではないかと考えられています。
副腎疾患において最も深刻な症状は、メスの「貧血」とオスの「排尿障害」です。発情したメスを放っておくと、自力回復できない命に関わる貧血を起こします。そのため、繁殖を目的としないメスには不妊手術を受けさせます。ところが、手術済みのメスであっても、エストロゲン過剰になると同様の貧血を起こすことがあります。副腎疾患による貧血はオスにも起こり得ますが、メスのほうが起こしやすいようです。
また、オスの生殖器官の一部である「前立腺」の一部が膨らんでくることがあります。前立腺は尿道を取り巻くようにして存在しているため、尿道が圧迫されて排尿障害が生じます。前立腺の異常そのものよりも、排尿障害や、泌尿器の炎症が心配です。これらが進行するとフェレットにも不快感や痛みが起こりますし、排尿不能に陥ると命に関わります。前立腺はメスにはありませんから、この問題はメスには生じません。
これら性ホルモン過剰が起こす症状のほかに、病気が進行して副腎そのものが危険な状態に至ることもあります。けれども、これらは、あくまで最も深刻な症状です。副腎疾患の経過はフェレットによって千差万別です。ホルモンという微妙で精緻な体のシステムを介して症状が現れるためでしょう。また、副腎疾患で急に寝たきりになってしまう、ということはありません。発見が遅かった場合は別ですが、普通に生活できる状態のまま病気が進行するのが一般的です。
副腎疾患では、むしろ命には関わらないものの毎日の生活の中で問題になる症状のほうが多いかもしれません。その筆頭が「脱毛」です。脱毛は、尻尾の付け根や尻尾全体からはじまることが圧倒的に多く、やがて背筋や首筋、腹部、頭頂部、最終的には顔だけを残して全身に広がります。フェレットによっては、一部分だけ脱毛したり、脱毛と回復を繰り返したりすることもあります。
副腎疾患による脱毛は、重症の皮膚疾患やヤケドなどとは違い、いわばハードウエアである地肌がダメージを受けたわけではありません。ソフトウエアである「発毛のしくみ」にトラブルが起こっているだけです。ですから、副腎疾患が完治すれば、アッという間に元通りになります。また、性ホルモン過剰が改善されただけでも生えてきますし、何もしていないのに、突然、自力回復することもあります。けれども、脱毛している間は地肌が傷つきやすく、見た目にも可哀想で、飼い主さんも辛い思いをしがちです。脱毛については、後ほど治療方法のところでも触れます。
1〜2歳の若いフェレットの尻尾だけが脱毛してネズミの尻尾のようになってしまうことがありますが、副腎疾患による脱毛とは区別されています。年齢的なこと、脱毛が尻尾だけにとどまっていることなどが理由です。ただし、3歳頃からは、短期間で回復したり、一部分だけだったり、尻尾以外だったりしても不自然な脱毛があれば心に留めておきましょう。
全身脱毛でも回復の可能性が・・・
|
Q
|
脱毛以外に早期発見の手がかりはありますか? |
|
|
|
A
|
行動、体臭、地肌に変化がみられることがあります。 |
「行動の変化」はオスに顕著で、ほかのフェレットを激しく攻撃したり、マーキングやマウンティングをしたりします。「体臭の変化」や「地肌の変化」は皮脂が過剰になるために生じ、しばしばフケや痒みを伴います。ただし、これらは必ずしも副腎疾患の症状であるとは限りません。フェレットの気性、体質、栄養状態、衛生状態なども原因になり得ます。また、検査で副腎に異常が確認されていても症状が何も現れないこともあります。
さらに、メスでは「外陰部の腫れ」があります。これは、発情や、卵巣の全部や一部の取り残しと同じ症状で、見た目では区別できませんが、ホルモン注射への反応によって見当をつけることができます。ホルモン注射については、後ほど検査方法のところでも触れます。
(続く)
|
●JFA事務局より
JFA NEWSのページ数の都合により、本記事は分割して掲載します。
|
|
●この記事は一般の医療情報であり、個々のケースには当てはまらない事もあります。
●医療処置や薬剤投与は必ず事前に獣医師に相談し、飼い主の判断で運用してください。 |
|
|